ターミナルケア(終末期)を行う際は、患者と相談して適切な処置やサポートを行う必要があります。
家族は終末期にできることを知り、全力で患者のサポートを行うのが望ましいです。
今回は、ターミナルケア(終末期)の概要や家族にできること、気をつけることについて解説します。
患者が納得して最後の時間を過ごすためにも、家族がすべきことについて確認しましょう。
ターミナルケア(終末期)とは
終末期とは、いったいどのような時期なのでしょうか。ターミナルケアや緩和ケアなどの似た言葉がいくつかあるため、終末期の概要について詳しく知っておくことが重要です。終末期の概要や、緩和ケアとの違いについて解説します。
終末期とは
終末期は、複数の医師により回復が見込めないと判断される状態のことを指します。終末期かどうかの判断は一人の医師だけではなく、複数人の医師の客観的根拠をもとにして判断します。
終末期は、生活の質(QOL)の向上を目的とするため延命治療を行いません。終末期の方は治療では改善が見込めず、余命が残りわずかの状態です。終末期医療は患者の望むかたちで行う必要があり、自宅や病院、介護施設などの場所で終末期医療が行われます。
終末期と宣告されることで、残りの時間の過ごし方について家族といっしょに考えられます。終末期と知った患者は、世話をしてくれた方に感謝を伝えて最後を迎えることが多いです。
ターミナルケアと緩和ケアの違い
ターミナルケアと緩和ケアは少し異なります。それぞれのケアの違いについて確認しましょう。
ターミナルケア
ターミナルケアは、残された時間を自分らしく過ごすために行われます。ターミナルケアの開始時期は延命治療をしないと判断したタイミングであり、生活の質の向上を目的とします。延命治療をやめたタイミングで開始するため、家族も決断するには非常に勇気が必要です。
緩和ケア
緩和ケアは、病気や症状の痛みを緩和させることが目的です。身体的ケアだけでなく、精神的にもサポートを行います。痛みを軽減させるタイミングが緩和ケアの開始時期であり、ターミナルケアとは少々異なります。
終末期の看取り期間
終末期の決定は、複数の医師の客観的根拠をもとに判断され、終末期の方は数週間~半年以内に死を迎えるといわれています。回復する見込みがないことが前提であり、患者や家族が納得することが必要です。
看取り期間は、患者の症状にもよりますが長くても1年ほどです。家族は医師と相談しながら、終末期の方のサポートを行ってください。
終末期の患者の精神状態
終末期の患者の精神状態は症状によりさまざまですが、死を受け入れるまでは同じステップをたどります。終末期の方の精神状態を理解してあげると、どのように対応すべきかを理解できるでしょう。以下では、終末期の患者がどのような精神状態になるかを解説します。
ステップ1:否認
終末期であることを医師から告げられた際は、認めたくない感情が起こり否認します。否認は終末期を告げられた際に、はじめに起こる感情であり、元気な方にとっては医師の発言が本当かどうかを疑う方もいます。終末期を告げられた患者だけでなく、家族も否認の感情が起こります。
ステップ2:怒り
否認から、怒りに変わる場合があります。否認から怒りに変わる場合は、現実と向き合っている状態でもあります。何が原因なのかを模索する方もいますが、なかには怒りの感情がまったく現れずにすぐに終末期を受け入れる方もいます。
ステップ3:信仰
どうにもできない状態から、神や仏を信仰して気持ちを安定させる方もいます。信仰を行う方は、気持ちが不安定な状態になり始めているため、家族は患者に寄り添って精神的ケアを行う必要があります。精神的不安を狙った悪意のある第三者からの勧誘には、気をつけなければなりません。
ステップ4:気持ちの落ち込み
気持ちが落ち込み、何事にもやる気が起きなくなります。抑うつ状態は事実を受け入れる一歩手前であり、気持ちの整理をしている状態でもあります。
ステップ5:事実の受入
終末期を受け入れ、終活を行う方もいます。身の回りの整理やお世話になった方に感謝を伝えて、人生を振り返るための最後の貴重な時間を過ごします。
終末期医療を在宅で受ける際の体制
精神状態を安定させて生活を送るには、在宅で過ごすことが望ましいです。在宅でも訪問看護や訪問介護、訪問診療などの連携により終末期医療の体制を組むことができ、患者が不安に感じないでしょう。
病院で終末期医療を受けることも可能ですが、環境が変わると患者にストレスを与えてしまう場合があります。在宅で終末期医療を受ける際は、ケアマネージャーを含めた介護職・医療職の多職種連携を意識して体制を整えることが重要です。
終末期に患者がすべきこと
終末期を宣告された際に、患者が行うべき行動がいくつかあります。どのようなことをすべきかを事前に知っておくことで、医師から終末期を宣告されても適切に対応できるでしょう。終末期を宣告された患者のとるべき行動について3つ紹介します。
葬儀の準備
終末期を宣告された方のなかには、葬儀の準備を進める方もいます。生前に葬儀の準備を患者自身で進めておくことで、親族の負担を減らせます。また、葬儀に参列してほしい方や遺影の希望などを事前に伝えておくとスムーズに葬儀の準備を行えます。生前に葬儀を準備することは、命を尊重する意味でも大切です。
生前に葬儀を準備する際は、家族のサポートが必要です。葬儀の手配や準備は体力的にもしんどいため、家族といっしょに相談して決めましょう。
エンディングノートを書く
エンディングノートを書くと、気持ちの整理がついて精神状態が安定します。エンディングノートに書く内容は、今までの人生の振り返りや亡くなったあとの相続について、今後の希望などを書くのがよいでしょう。病気が進行すると、思うように会話ができないこともあるため、エンディングノートにリクエストを書いておくのが望ましいです。
遺言書の作成
遺言書を作成して、相続の手続きを進めることも重要です。遺言書を作成しておくと、遺産相続の際に親族同士でもめ事が起きないため事前に作成してください。遺言書の作成は個人でも行えますが、法律に詳しくない場合は専門家に相談するのが重要です。相続税や遺留分減殺請求など、初心者にはわからないことが多いため司法書士や弁護士に相談しましょう。
終末期に家族ができること
患者だけでなく、家族にもできることがたくさんあります。終末期の患者は、精神的や体力的にも限界に近いため家族のサポートが重要です。安心して最後を迎えてもらえるためにも、家族ができることについて確認しましょう。
終末期の方の思い出作り
家族は、終末期の患者が最後の時間を有意義に過ごせるように一緒に思い出を作ってあげましょう。行きたい場所を聞いて、旅行の計画をしてあげてください。旅行に行く際は、外出許可書をもらい医師と相談する必要があります。無理をすると旅先で迷惑をかけることもあるため、症状を確認してください。
終末期の方の終活の手伝い
終活は時間や体に負担がかかるため、家族も手伝いましょう。終活は葬儀の準備だけでなく、遺言書の作成や身の回りの整理、お世話になった方へのお礼回りなどがあります。終活を計画的に進めることで、最後の人生についていっしょに考える機会をもてます。
終末期の方に寄り添う
家族は、終末期の方といっしょに過ごす時間を増やしましょう。時間は限られているため、今まで仕事が忙しくて過ごす時間が少なかった方は、旅行などの計画を行い、時間を作ってあげてください。
終末期の方の希望を叶える
終末期の患者の希望を確認して、最後にしたいことを叶えてあげましょう。食べたいものや行きたい場所などを聞いて、体の無理のない程度に行動するのが重要です。ゴルフや釣りなど、日常的な趣味を最後にしたいかもしれません。
終末期に家族が気をつけること
終末期の患者をサポートする際は、家族が気をつけることがあります。注意点を意識しないと、家族だけでなく患者にも負担がかかるかもしれません。献身的なサポートをするためには、どのような点に注意すべきかを確認しましょう。
患者の体の衰え
患者の体の衰えを認識しましょう。患者の体は、食事の制限やバイタルサインの影響のため衰弱が始まります。今までは元気でも急激に体が衰えるため、家族は常に体の異変に気をつかう必要があります。
個人により衰弱時期は異なりますが、患者の体の状態を確認しながらサポートをしてください。担当医に終末期のケアの仕方を聞いておくと、何かあったときでも焦らず対応できるでしょう。
死を意識しすぎない
患者だけでなく、家族も死を意識しすぎないことが重要です。死を意識しすぎると、終末期の方にも伝わってしまい暗い気持ちになります。残された時間をどのように過ごしたいかを積極的に会話して、大切な時間をいっしょに過ごすことだけを考えましょう。
看病に負担をかけすぎない
家族はご自身の健康を考えながら、看病するように心がけましょう。終末期ケアを行う際は、家族も肉体的・精神的につらいため、無理をすると病気を患うことがあります。
あまりにもつらい場合は、家族だけで対応せずにケアマネージャー、ソーシャルワーカーや医療スタッフに相談してください。最後の時間をいっしょに過ごすことは大切ですが、体に負担がかかるようならば病院や介護施設に依頼するのがおすすめです。
コミュニケーションを積極的にとる
積極的にコミュニケーションをとりましょう。意思疎通がとれていないと、最後の生活を患者の希望通りに過ごせないかもしれません。話すのがつらい方でも、一方的に話しかけてあげることで、気持ちが安定して幸せな気持ちを感じてくれます。
終末期の考え方は人によりそれぞれ異なるため、患者の希望を聞いてあげてください。してほしくないことや、死に対してどのように感じているかなどを共有しておくことが大切です。
終末期に行うケア方法
終末期のケアは身体的だけでなく、精神的や社会的ケアも必要です。生活の質の向上を目指すうえでも、それぞれのケアの方法について確認してください。
精神的ケア
終末期の方は、精神的に不安定になりやすいです。精神状態を安定させるためにも、家族のサポートが必要であり、寄り添って残りの時間をいっしょに過ごすのが望ましいです。
精神的ケアの方法は、終末期の方の希望を叶えてあげることが重要です。希望を叶えるためには、終末期の方と積極的にコミュニケーションをとる必要があり、どのようなことをしたいかをメモしてください。やりたいことリストを作成することで、残りの人生をより豊かに過ごせるはずです。
また、暮らしている生活環境を整えると精神状態が安定しやすくなります。終末期を自宅で過ごしているならば、部屋の模様替えをしたり好きな音楽をかけたりして、なるべく不安にならないような環境づくりを心がけましょう。終末期の患者の趣味や、好きなことなどを取り入れると喜んでもらえます。
精神的ケアを行う際は、家族の精神状態も安定させることが重要です。家族が不安に感じてしまうと、終末期の患者も安心して残りの時間を過ごせません。つらい状況ですが、なるべく笑顔で楽しい時間を過ごせるように心がけてください。
身体的ケア
日が経つごとに体が衰弱していくため、身体的ケアをきちんと行う必要があります。主治医の指示を聞いて、無理をしない生活を心がけなければいけません。終末期には体に強い痛みを感じる場合があり、倦怠感や食欲不振、呼吸困難などのさまざまな症状がでてきます。痛みが生じる際は、鎮痛剤を投与して身体的ケアを行わなければいけません。
また、終末期になると自分でご飯を食べられなくなるため、栄養をチューブなどで補給する必要があります。まだ患者自身で食べられる場合は、食べ物の大きさを細かく切ったり流動食を与えたりして、サポートしてあげましょう。
社会的ケア
自分が亡くなったあとの遺品について、不安に感じる方もいます。終末期の患者が生きているあいだに、身の回りの物をいっしょに整理しておくのが望ましいです。身の回りのものだけでなく、クレジットカードや銀行の手続き、遺言書の作成なども事前に進めてください。家族は手伝える範囲でサポートしてあげましょう。
終末期医療を受けられる場所
終末期医療を受けられる場所は、病院だけではありません。終末期医療の場所を選ぶ際は、患者の望むところで受けるのが望ましいです。本人の意思がわからなければ、ご家族が判断して適切な場所を選んであげましょう。
介護施設
終末期医療は、介護施設でも受けられます。介護施設では、ケアマネージャーや介護スタッフが、24時間体制で看病してくれます。家族の負担が少なく、緊急の際も対応してくれるメリットがあります。介護施設で終末期医療を受けるメリット・デメリットを確認しましょう。
メリット
介護施設で終末期医療を受けると、日常生活のサポートやケアを行ってくれるため、患者も安心できます。自宅で終末期医療を行うと、専門の方がいないため精神的に不安を感じてしまう場合があります。
自宅では家族しかいませんが、介護施設で終末期医療を受けると他者と関わりをもてるのがメリットです。常にだれかがいる環境を求めるならば、介護施設での終末期医療がよいでしょう。
デメリット
介護施設での終末期医療のデメリットは、経済的負担が大きい点です。介護施設では保険適用であっても、毎月それなりの費用がかかります。また、介護施設で暮らすことに対してストレスを感じる方もいます。家族との面会も限られているため、精神的負担が大きくなるかもしれません。
病院
病院で終末期医療を受けると、症状が急変した際も適切に対応してくれます。安心して任せられますが行動に制限があるため、自分の意思で決定できないことがあります。そのほかにも、メリット・デメリットがいくつかあるため解説します。
メリット
病院で終末期医療を受けると、すぐに治療を行える体制が整っています。すぐに治療を行えるだけでなく、不安なことはすぐに相談できるメリットもあります。すぐに相談できるため、家族も精神的負担は少ないでしょう。
デメリット
デメリットは、介護施設と同様に費用がかかります。費用がかかるだけでなく、患者の動ける範囲が制限されているため、自由に過ごせないデメリットがあります。病院で暮らすことにストレスを抱えてしまう場合があり、希望の生活を送れないかもしれません。
自宅
自宅で終末期医療を受けると、楽しい時間を家族といっしょに過ごせます。楽しい時間を過ごせますが、何かあった際にすぐに治療を行えないデメリットもあります。ここでは、自宅で終末期医療を受ける際のメリット・デメリットについて詳しく確認しましょう。
メリット
自宅で終末期医療を受けると、家族と楽しい時間をいっしょに過ごせます。それだけでなく、落ち着いた空間で暮らせるため、自分のしたいことを優先できるメリットがあります。終末期になった方の多くは、自宅で最後の時間を過ごしたい方が多いです。最後の時間を家族と暮らしたい方は、自宅で終末期医療を受けることをおすすめします。費用の負担も少ないため、経済的不安もほとんどありません。
デメリット
自宅で終末期医療を受けると、体調が急変した際は対応が遅れることがあります。病院ならば医師や看護師がすぐに対応しますが、自宅で終末期医療を受けると医師や看護師が行くまでに時間がかかります。
また、患者の症状により家族に大きな負担をかける場合があります。身体的負担だけでなく、精神的負担を家族が感じることがあり、自宅ケアが難しいと感じる方もいます。自宅ケアを行う際は、介護者一人で抱え込まないことが重要です。ほかに家族がいる方は、家族全員でサポートすることで介護の負担を軽減できます。
終末期医療は自宅でも問題ない
終末期医療を受ける場所は、自宅でも問題ありません。病院や介護施設で終末期医療を受けると、緊急の際に対応してくれますが費用がかかります。行動に制限をかけられる場合があり、患者がストレスに感じる場合があります。最後の時間を有意義に過ごすためにも、メリット・デメリットを踏まえてどこで終末期医療を受けるかを選択しなければいけません。
終末期医療を受ける場所は、患者の意見を聞いてあげることが重要です。終末期の方は、最後の時間は自宅で過ごしたい方が多いです。自宅でも体制を整えると十分な終末期医療を行えるため、場所で悩んでいる方は自宅を選択することをおすすめします。
まとめ
今回は、終末期に家族ができることと気をつけることについて解説しました。患者の気持ちを安心させるためにも、家族のサポートが非常に重要です。患者の最後の時間を充実させるには、終末期医療について家族も詳しく知っておくことが必要です。