訪問看護は、提供できるサービスに限界があり、実施できない内容も存在します。
たとえば、訪問看護サービスでは職員が患者に同行して病院についていくことはできません。
訪問看護でできること・できないことについて知っておかないと、ご自身の希望するサービスを受けられない可能性があります。
そこで今回は、訪問看護の範囲や適用条件について詳しく解説します。希望するサービスを受けるためにも、訪問看護の範囲をきちんと理解して利用しましょう。
訪問看護とは
自宅でサポートを受けられるサービスは、訪問看護だけではありません。訪問看護以外には買い物代行サービスなどがあり、依頼する業者により受けられるサービスが異なります。以下では、訪問看護の概要や訪問介護との違いについて解説します。
訪問看護とは
訪問看護は、病気や障害の療養が必要な方が受けるサービスです。訪問看護は厚生労働省が定義しており、傷病者の回復を目的としています。訪問看護のスタッフはだれでも行えるのではなく、専門的な資格を有する者だけが行えます。
訪問介護との違い
訪問看護と訪問介護は共通点が多いため、どちらのサービスを受けるとよいか迷う方が多いです。訪問看護と訪問介護の大きな違いは、医療行為を行えるかが異なります。
訪問看護は、点滴などの医療行為を行えますが、訪問介護の場合は行えません。受けられるサービスだけでなく、訪問看護と訪問介護は利用できる保険も異なります。訪問看護は医療保険や介護保険を利用できますが、訪問介護では医療保険の適用はありません。これらの保険適用は年齢により異なるため、受けられるサービス内容や保険適用は事前に調べておくのが望ましいです。
訪問看護でできること
訪問看護では、受けられないサービスもいくつかあるため、サービスの内容を確認しておくことが重要です。訪問看護では、どのようなサービスを受けられるのかを紹介します。
医療処置
訪問看護は、注射などの医療処置が可能です。訪問介護では医療処置を行えないため、医療処置を基準に訪問看護を選ぶ方もいます。
薬の管理や相談
訪問看護の職員に薬の管理や、薬の服用について相談できます。どの薬を服用すべきかわからない場合は、訪問看護師にサポートしてもらえます。
私生活の介助
訪問看護師は、患者のご自宅での生活の介助を行います。生活の介助ではお風呂やトイレ、洗髪などを行ってくれるため、体の不自由な方でも安心して任せられます。
リハビリ
訪問看護を依頼すると、リハビリを自宅で受けられます。病院に行かなくても、自宅でできる範囲でリハビリを行えるため、リハビリを目的としている方も利用できます。患者自身でリハビリする方法なども教えてもらえます。
健康管理・バイタルチェック
訪問看護師は、健康管理やバイタルチェックを行います。病院に定期的に通えなくても、訪問看護師が検査してくれるため健康状態を把握できます。
訪問看護でできないこと
訪問看護師に依頼するとさまざまなサービスを受けられますが、なかには業務として受けられないサービスがあります。ご自身の希望のサービスの有無を、依頼する前に確認したほうがよいでしょう。以下では、訪問看護でどのようなサービスが受けられないかをみていきましょう。
買い物代行
訪問看護は、買い物の代行を依頼できません。買い物を代わりに行う買い物代行サービス業もありますが、訪問看護ではサービスの対象外です。
家事全般
訪問看護は、家事全般を依頼できません。掃除や洗濯、料理などを依頼できないため、ほかの訪問サービス業者に依頼する必要があります。
病院への受診同行
病院への受診に同行できません。訪問看護はあくまで、自宅で簡易的な看護をすることが目的です。そのため、病院に同行するサービスは適用外です。
訪問看護の資格について
訪問看護の職員は専門的な資格を保有しており、一般的に訪問看護師と療法士が在籍しています。職員により行える業務が異なるため、それぞれの業務内容について確認しましょう。
訪問看護師
訪問看護師は、バイタルチェックや簡易的な医療行為、病気の予防をメインとして業務を行います。在宅ケアでは、お風呂やトイレなどの介助を行うため業務内容の幅は広いといえます。ほかにも、家族に介護のアドバイスや症状の観察なども行います。
療法士
療法士の資格により業務内容が異なりますが、主に患者のリハビリを行います。理学療法士の場合は、身体機能の改善や動作能力の向上を目的としたリハビリを行います。
作業療法士は、様々な事情で手先が不自由な方の訓練やうつ病など精神疾患がある方のリハビリを行います。身体的能力の回復だけでなく、社会適応力の改善や基本的な動作能力の改善を目的としています。
訪問看護の適用条件
訪問看護サービスを必要とする方は、どなたでも受けられます。しかし、訪問看護サービスを受ける際は、担当医が作成した訪問看護指示書が必要です。訪問看護指示書がないと訪問看護のサービスを受けられないため、医師に相談する必要があります。
訪問看護のメリット
訪問看護のサービスを受ける際は、メリット・デメリットをきちんと把握してサービスを受ける必要があります。訪問看護を受けるメリットについて解説します。
通院の負担がなくなる
訪問看護を利用すると通院の負担がなくなるため、病院に通うのが厳しい方におすすめです。通院回数が多いと、交通費や身体的負担がかかります。訪問看護のサービスを受けると、訪問看護のスタッフが自宅に来るため、通院回数を減らせるのがメリットです。
看護や介護の負担が減る
訪問看護サービスを受けると、介護者の負担が減るメリットがあります。家族の負担が減ることで、家事や仕事の両立が可能になる方もいます。家族の負担が減るだけでなく、自宅に訪問看護のスタッフが来てくれることで安心感につながるでしょう。
専門的な治療を自宅で受けられる
医療行為を受ける場合は、基本的には病院に行く必要があります。訪問看護のサービスにより受けられる内容が異なりますが、看護師に対応してもらう点滴や胃ろうチューブの管理などを自宅で受けられる場合があります。理学療法士に対応してもらうと、専門的なリハビリを受けられるため、身体機能の回復を目指せます。
脳卒中などの後遺症がある方は、作業療法士がリハビリを行います。国家資格を持った専門家が治療をしてくれるため、自宅でも安心して訓練できます。
退院したあとも治療をスムーズに行える
退院後に今までどおり自宅で生活できるか、不安を感じる方も多いです。訪問看護を利用すると、医療処置だけでなく、トイレや自宅内の移動など訪問看護のスタッフがご自宅での生活環境の整備、訓練をしてくれるため、不安を感じずに生活に慣れていけます。
訪問看護のサービスを受ける際の注意点
訪問看護サービスを受ける際は、いくつか注意する点があります。以下では、どのような点に注意すべきかを紹介します。
買い物や家事はサービス対象外
訪問看護は、買い物や家事は対象外です。訪問看護は療養のサポートを目的としているため、日常生活の代行は行えません。日常生活の代行を依頼する場合は、ヘルパーなどのサービスを受ける必要があります。
年中無休ではない可能性
訪問看護サービスは、年中無休ではない可能性があります。土日や祝日が休みの場合があり、夜間もサービスを受け付けていないこともあります。訪問看護のサービスを行っている事業所により、受付時間が異なるため事前に調べておきましょう。
すぐに訪問看護を受けられない
訪問看護サービスは、すぐには受けられません。医師の訪問看護指示書がないと受けられず、介護認定申請から結果が出るまでに1か月近くかかることもあります。スムーズにサービスを受けるためにも、計画的に手続きを進める必要があります。
家族の判断が必要になる場合がある
患者が転倒した際などは、家族の方の判断が必要になる場合があります。病院で転倒した際は看護師がすぐに対応してくれますが、訪問看護サービスの際に問題が起こった場合は家族の同意が必要になるケースがあります。すべて訪問看護のスタッフが対応してくれるわけではないため、緊急時の対応はあらかじめ決めておくのが望ましいです。
訪問看護の医療保険と介護保険の適用について
訪問看護は、医療保険や介護保険が適用されます。医療保険と介護保険のどちらが適用されるかは年齢や症状により異なるため、適用条件について知っておく必要があります。医療保険と、介護保険の適用条件について解説します。
医療保険と介護保険は同時に利用できるのか
医療保険と介護保険は同時に受けられないため、要介護・要支援を受けている場合は介護保険が優先されます。
医療保険の適用条件
医療保険の適用条件は、医師が作成した訪問看護指示書をもらっている方です。40歳未満の方は、医師が訪問看護を必要と認めた場合に受けられます。40歳以上の方は、要介護・要支援に該当していないことが条件です。また、介護認定を受けている方でも、特別な疾患や状態の場合は医療保険の適用となります。
介護保険の適用条件
介護保険の適用条件は、医療保険の適用条件と同様に医師からの訪問看護指示書が必要です。要支援、もしくは要介護認定を受けた65歳以上の方や、40~65歳未満の特定疾病に該当する方で要介護・要支援の認定を受けた方が該当します。
訪問看護を受ける際の流れ
訪問看護を受ける際は、適切な手順で申請を行う必要があります。訪問看護を開始するまでの流れについて確認しましょう。
ステップ1:地域包括支援センターに申請する
まずは、要介護・要支援の認定手続きを行います。認定申請手続きは、地域包括支援センターに相談すればサポートしてもらえます。入院中の場合は医療機関のスタッフに代行してもらう方法もあります。認定が出るまでの間にケアマネージャーの選定をしておくことが望ましいです。介護保険が適用にならない場合は、直接訪問看護事業者に相談すると、必要なことをアレンジしてくれるケースもあります。
ステップ2:訪問看護指示書を作成してもらう
医師に訪問看護指示書を作成してもらいます。訪問看護指示書がないと、訪問看護サービスを受けられません。訪問看護事業者によっては、主治医と連絡をとって訪問看護指示書の依頼をしてくれます。
ステップ3:訪問看護のプランを決める
訪問看護指示書をもらうのと並行して、介護保険適用の場合はケアマネージャー、訪問看護事業者と一緒にプランを決めます。要支援や要介護のレベルに応じてサービスを決めて利用契約を結びます。ケアマネージャーがいない場合や介護保険が適用にならない場合は、訪問看護事業者と直接相談します。
ステップ4:訪問看護開始
契約が終わり、訪問看護開始日になるとサービスを受けられます。介護認定までには1か月近くかかることもあるため、早めに手続きをしておくとよいでしょう。
訪問看護サービスのQ&A
訪問看護サービスでよく質問されることがいくつかあります。Q&Aについて確認しましょう。
訪問看護を受けるには誰に相談すべきなのか
訪問サービスを受ける場合、かかりつけの病院や訪問看護ステーション、地域包括支援センター、ケアマネージャーなどに問い合わせるとスムーズに進みます。受けたい訪問看護サービスがある方は、直接業者に連絡しましょう。
訪問看護の職員はどのような資格をもっているのか
訪問サービスを依頼する場所により異なりますが、看護師や准看護師、保険師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などがご自宅へ伺います。事前に、希望の資格を持っている業者かどうかを確認することも重要です。
まとめ
今回は、訪問看護のできることやできないこと、適用条件について解説しました。訪問看護はすべてに携われるのではなく、決められた範囲の中でしか業務を行えません。訪問看護で受けられるサービス内容を事前にきちんと理解してから申請をしましょう。