SORAのスタッフは、毎年それぞれの興味やスキルなどに応じて自ら研修計画を立てて自己研鑽しています。 そこで、このコラムでは各人が研修で学んだことをみなさんにお伝えしていきます。

今回は作業療法士のOが担当します。 テーマは【脳卒中の基礎知識やリスク、対応のポイント】です。

はじめに

脳卒中は冬の発症リスクが高くなるというデータがあり、特に脳出血とくも膜下出血が多いとされています。
寒さを感じると体は熱を逃さないように血管を収縮させ、血液の通り道が狭くなることで血圧が上昇しやすくなるためです。これから寒くなるにつれてリスクが高まる疾患のため、基礎知識や評価方法、予防策など改めて理解を深めようと思いこのテーマにしました。

脳卒中とは

高血圧、脂質代謝異常、糖代謝異常、非弁膜症性心房細動、遺伝的要因などの危険因子により、脳の血管が破れたり、詰まったりして脳の血液循環に障害をきたし、さまざまな症状を起こす病気です。
脳出血(脳内出血)、脳梗塞、くも膜下出血、一過性虚血発作などがあります。

脳卒中の症状

出血や梗塞などで損傷された場所によって症状が違い、損傷部位が大きいほど強く複合的にみられます。
以下に代表的な大脳の損傷部位と症状をいくつか挙げてみます。

・前頭葉
遂行機能障害、運動機能障害(片麻痺、感覚障害)、言語障害(構音障害、失語症)遂行機能障害、運動機能障害(片麻痺、感覚障害)、言語障害(構音障害、失語症)

・頭頂葉
空間認知障害(半側空間無視)

・側頭葉
言語障害(構音障害、失語症)、記憶障害(健忘)

・後頭葉
視野傷害(半盲、複視)

発症しやすい時間帯や場所など

時間帯や場所によって発症リスクは変動します。
時間帯は早朝(起床~2時間)が最も危険とされています。
起床直後は早朝血圧サージという睡眠中や明け方に下がっていた血圧が起床後に急激に上昇するという現象が起きやすいためです。起床に伴う交感神経の急激な活性化とそれに伴う血管の収縮が主な理由です。

場所は冬の夜間のトイレ、早朝の新聞取りなどの短時間だけ寒いところに出るシーンや浴室です。
気温が10度下がると収縮期血圧が約5~10mmHg上昇すると言われています。
急激な血圧上昇はもろくなった脳の血管が破れやすく脳出血になったり、動脈硬化で狭くなった血管にさらに負担がかかり脳梗塞になったりするリスクが高まります。

また、冬はのどの渇きを感じにくいため知らない間に水分不足が進みやすく脱水になりやすいです。
脱水になると血液が濃くなり流れにくくなることで血栓ができ脳梗塞に繋がりやすくなります。

脳卒中を疑ったら…

いつもと動きが違う、感覚が鈍い、頭痛がひどいなど違和感があり不安になる時があるかもしれません。
そんな時のために自宅で簡単にできる評価方法があるため紹介します。

英語の頭文字をとり、「FAST」と言います。

・Face(顔の麻痺):笑顔が上手く作れるか。顔の片側が下がる、ゆがむ。

・Arm(腕の麻痺):両腕を上げ、掌を上にしたままキープできるか。片腕に力が入らない。

・Speech(言葉の障害):短い文がいつも通り喋れるか。言葉が出てこない、呂律が回らない。

・Time(発症時刻):上記1つでも該当すれば脳卒中の可能性があるため、症状に気付いたら発症時刻を確認して救急要請。

腕の麻痺にある両腕キープはバレー徴候とも呼ばれ、感度92%、特異度90%と陽性率は非常に高いです。
また、一度死滅した脳細胞は回復しないため治療は時間との勝負になります。
脳梗塞は時間によってできる治療法が異なり、発症後4.5時間以内なら血栓溶解療法、24時間以内なら血栓改修療法が可能です。そのため最終健常時間の情報や迅速な救急要請が重要となってきます。
一見脳卒中に見えますが、最終診断が別の疾患であるものをストロークミミックといい、低血糖や大動脈解離、てんかん、電解質異常などがあります。糖尿病が既往歴にある方は低血糖を疑いましょう。

脳卒中予防

・減塩を含めた血圧の適正な管理
130/80mmHg未満(75歳未満、冠動脈疾患、CKD(蛋白尿陽性)、糖尿病、抗血栓薬服用中の場合)
140/90mmHg未満(75歳以上、両側頸動脈狭窄や主冠動脈閉塞がある場合、CKD(蛋白尿陰性))

・脂質の適正な管理
・糖尿病コントロール
・心房細動に対する適正なリスクヘッジ
・禁煙、節酒
・運動
・適性体重の維持
・脱水、ヒートショックの対策
・口腔ケア(歯周病は脳卒中発症リスクを高める)

脳梗塞になった方の実体験と相談窓口

脳梗塞になった方のお話をお聞きしました。

”起床時に左半身に動きづらさを自覚し神経内科に受診。
病院で頭部CT撮影を行いましたが異常なしと診断されました。
しかし、脳卒中らしい症状があったため何かあると思い、区の在宅医療相談窓口に連絡し、どこに行けば良いのか相談しました。
脳神経外科の受診を勧められ自転車で病院に行き、MRI撮影を行い脳梗塞と診断されました。
前日までは違和感などなく通常通り仕事を行えており、突然発症する怖さを実感しました。
再発しないよう管理を行い、今も通院は続いています。”

みなさんが想像している脳卒中のイメージとは違い、症状が軽いと上記エピソードのように自転車に乗る事も可能です。

症状が軽く救急車を呼ぶべきか迷った場合の相談窓口として、「#7119(東京消防庁救急相談センター)」があります。医師や看護師、救急救命士などの相談医療チームが24時間、365日対応しているため、連絡することで指示やアドバイスを仰ぐことができます。東京では以下の電話番号から連絡することもできるため掲載します。

東京23区:03-3212-2323
多摩地区:042-521-2323

豊島区であれば在宅医療相談窓口もあります。医療や在宅福祉に詳しい専門の相談員が常駐しているため、電話などで相談できます。03-5956-8586

介入時に気を付けていること

高血圧や血圧が上がりやすいなどリスクがある方には運動する前後で血圧測定を実施しています。
最初から血圧が高い場合には運動量の調整や眩暈、頭痛の有無などの体調を確認したり利用者様の様子をみたりしながら介入しています。

運動時は力を入れるために息を止めてしまう方も多いですが、血圧が上昇しやすくなるため呼吸を促しながら実施しています。主治医や病院にも連絡し、介入中の様子やバイタル等の情報を共有しています。

水分は20~30分ごとに摂取していただいています。
退院直後はもう入院したくないと思われる方も多く、最初は再発しないよう服薬をしっかりと行いますが、徐々に気が緩み服薬しなくなるケースも見られます。そのため看護師と協力しながら服薬ができているか確認したり管理を行ったりしています。

まとめ

・気温が下がる場所へ行くときは一枚羽織るなど調整しましょう。

・合言葉はFAST。違和感や異変を感じた場合は試してみましょう。

・脳卒中の疑いがあればすぐに搬送を検討しましょう。

・血圧測定や適度な運動、こまめな水分摂取など自分でできる対策を行い予防に努めましょう。

・救急車を呼ぶか迷った際は#7119や在宅医療相談窓口へ連絡しましょう。