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在宅療養コラム~認知症編その1

厚労省の推計では、高齢者における認知症と軽度認知障害(MCI)の有病率の合計値は約28%(2022年時点)であり、「誰もが認知症になり得る」という認識のもと国としての施策が進められています。

SORAでも認知症の利用者様は増えていますが、症状や行動は様々であり、その方にあわせたケアを検討して実施しています。
今回は認知症の特徴について簡単にお伝えします。

認知症とは

一度正常に発達した認知機能が、様々な原因によって後天的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態をいいます。
加齢によるもの忘れとは違い、大脳に明らかな機能的、器質的障害が現れるため症状が進行します。
例えば加齢によるもの忘れの場合、朝ごはんを食べたことは覚えているが何を食べたかは忘れてしまうという体験の「一部」を忘れる状態ですが、認知症の場合は朝ごはんを食べたこと自体を忘れてしまうという体験の「全体」を忘れる状態となります。認知症は物忘れをしているという自覚がありません。

また、認知症との違いがわかりにくいもののひとつにうつ病があります。
うつ病は意欲が低下することにより、記憶力や注意力が低下するという症状を生じるため一見すると認知症と似ている部分があります。
二つの違いは質問に対して、うつ病は「わかりません」を繰り返すのに対し、認知症は答えを取り繕うという行動に現れます。

中核症状と周辺症状

認知症の症状は大きく二つに分類され、中核症状と周辺症状(BPSD)と呼ばれます。
BPSDは生活環境や個人に大きく影響されるため、環境や周囲の人の対応を工夫したり、薬の調整など適切な治療を行ったりすることで改善が期待できます。

認知症の種類

認知症には脳の神経細胞が変性する変性性認知症と、脳血管が障害されることで起こる血管性認知症の2種類があります。
下記が代表的な認知症ですが、①~③は変性性認知症、④は血管性認知症に分類されます。

① アルツハイマー型認知症

全認知症の中で2/3を占めています。特徴的な症状としては記憶障害、見当識障害、物盗られ妄想などがあります。
病識は初期にはあることが多く、認知機能の低下はゆっくりと進みます。

記憶障害は初めは新しいことを覚えることが難しくなり、症状が進むにつれて古い記憶も思い出すことが難しくなります。
見当識障害は日時や場所、人が分からなくなり、例えば受診の予約がわからなくなる、外出先で迷子になるなどの症状が現れます。

② レビー小体型認知症

αシヌクレインを主成分とするレビー小体が大脳皮質など中枢神経系に広汎に蓄積することが原因です。
前回まで連載していたパーキンソン病も原因物質は同じですが、パーキンソン病はレビー小体の蓄積が脳幹部の中脳黒質に限局しています。
両者ともパーキンソニズム(安静時振戦、筋強剛、無動、姿勢保持障害)が共通しています。

他の認知症と比較すると幻視や妄想(知らない子供が部屋で遊んでいるなど)が特徴的な症状としてみられます。
また認知機能の日内変動が大きいことも特徴のひとつです。

③ 前島側頭型認知症

初期には人格変化や行動異常がみられます。
また行動にブレーキが効かなくなったり(ものを盗んでしまう)、同じ行動や言葉を繰り返したりといったことも特徴のひとつです。
病気の進行に伴い段々と自発性が低下していきます。

④ 血管性認知症

脳梗塞や脳内出血など脳血管障害によって生じる認知症で、全認知症の中でアルツハイマー型に次いで二番目に多い認知症です。
脳血管障害に伴う認知症のため、基礎疾患に高血圧、糖尿病、心疾患がみられることが多く、基礎疾患のコントロールも重要です。

特徴としては血管が障害された部位のみに機能低下が起こるため、新しいことを覚えることは難しくても、日常的な判断力や専門的な知識は保たれているなど「まだら認知症」と呼ばれる症状がみられます。
また感情を抑制する部位に梗塞が起こりやすいため、アルツハイマー型に比べて感情が不安定になりやすいです。

⑤ その他

混合型認知症という、アルツハイマー型認知症と血管性認知症が共存し同程度に認知症症状に関与しているケースもあります。
その場合治療法としてアルツハイマー型認知症の薬を使用することで認知機能の進行を抑制できる可能性があります。

認知症の治療

認知症の治療は大きく薬物療法と非薬物療法に分けられます。
薬物療法は認知症の種類によって薬剤は異なりますが、内服、貼付剤、点滴など様々な形態があります。
それぞれに特徴があるため生活状況や進行度、副作用などを考慮したうえで医師から処方されます。

一方で非薬物療法は運動療法、回想法、レクリエーション、音楽療法などがあります。
またご本人の悩みやご家族様の介護負担軽減のために生活、療養環境を整えることも重要となってきます。

脳腫瘍や正常圧水頭症などを原因とする認知症の場合は、原因疾患の治療により認知機能の改善が期待できます。

 

次回は実際にSORAで行っている、認知症の方への介入事例をご紹介していきたいと思います。

 

参考資料
・厚生労働省「認知症および軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」
・医療情報科学研究所編集「病気がみえる vol.7 脳・神経 第2版」

 

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SORAのスタッフは全員が認知症ケアの資格を取得しています。
(2025年10月現在)

認知症ケア専門士:1名
認知症ケア指導管理士:8名

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